・ことの始まり〜TOKYO MOTOR SHOW〜
ウチの仕事場の前の上司がどこから仕入れてきたか知らないがモーターショーの切符をくれた。非常に忙しい中だったが、なんとかヒマをみつけて昨年11月3日、幕張メッセへと向かった。前の車が翌年(つまり今となっては今年ね)車検を迎える事もあり、普段の車を見る目とは違う、「若干購入を意識した」スタンスで各ブースのピカピカの車たちを見て回った。
が、、、私は愕然とした。以前のような、モーターショー=わくわく、という気持ちは国産車ブースを回っているうちに消し飛んでいた。ない。欲しいと思える車がないのである。仕事について忙しくなったとはいえ、雑誌をはじめとする自動車メディアはマメに目を通していたのであるが、一同に会してみると国産車のつまらなさは思ったより酷かった。特に、私は昔サークルの旅行の際にオデッセイを運転して以来、「RVみてぇな車はあと25年くらいは乗りたくない」と心に固く決めてしまうほど、ミニバンとかワゴンには興味が無かったのである。せいぜい、国産で気になった車はMR-Sと市販車ではないがダイハツのコペン(軽の電動メタルトップつきオープンカー)くらい。大学を卒業した時、次の車はオープンかコンパクト2BOXかなあ、と思っていたのでこの2車がかろうじて私の目にひっかかったのである。
やや荒んだ気持ちで外車ブースを回る。BM、メルセデス、キャディラック・・・縁のなさそうなメーカーが続く。そんな私の目に一筋の光を射してくれたのは、プジョーではなく、VWだった。そう、Poloである。質実剛健のボディ、かくかくしたインテリア、いかにも上質コンパクトという感じである。中身で勝負!!という心意気が伝わってくる。なにより、ピカピカ光る細工に頼った日本車とは違う、ソリッドなボディーカラーバリエーションが魅力だった。小さい車に有彩色、この組み合わせが凄く好きなのである。これをMTでキビキビと…としばし妄想にふける。ふけりすぎてカタログをもらうのを忘れ、主要諸元もまともに読まなかった。ここで読んでいれば、Poloは瞬時に選択肢から消えていただろう(Poloには4ATしかなかったのでした)。
フレンチ・コンパクトも数社見た。しかし、ルノーはスタイリングが自分好みでなく、ソリッドな色も少ない。シトロエンのサクソは値段が高いのと、国産みたいなスタイルがいまいち気に入らなかった。うーん、中古で探そうかなあと思いかけていると、目の前に現われたるブルーライオンマーク。そういや、プジョー205って車があったなあ、先輩が古いのに乗っていたけど、雨の日になるとすぐ止まって、おまけに雨漏りもしていたっけ・・・なーんて思い出しながらプジョーを見て回る。つり目の206。おぉ、いいデザインだ、しかも色がいいとのっけから好印象であった。しかし、隣にあった306のスタイルプレミアムのお値段があまりに安い(203.5万円?)ので、そちらに気を取られて206には座ってみもしなかったのである。
帰りの電車の中、プジョーのカタログをめくる。かっこいいではないか。Poloより形と新しさをとったらこっちかな、なんて考えていた。しかし、約5ヶ月後、まさか206の契約書に判を押す事になろうとは、この時はまだ夢にも思っていなかったのである。
・買うぞ!!
突然、思った。2000年2月。きっかけは前者が車検を通すさい、いろんなものの交換時機が一気に押し寄せそうで、40万円くらいかかるのではないかと計算できたことである。さいわい、頭金になりそうな貯蓄もある。だらだらと冬のボーナスもほとんど使わずじまいだった。もう買う!!。思い立ったが吉日。まずトヨタへMR-Sの試乗へ。……何度か乗ったが結局没。実用性がなさすぎなのだ。そんなもん求める方が悪いという声も聞こえそうだが、哀しいかな私の車の使い方にMR-Sは合わなかった。ギターが載らないのである。
さて、残りは2車、プジョーとVWである。VWに雨の中出向いたが、私がジーパンにトレーナーで行ったせいだろうか、てんで相手にしてくれない。試乗車もないという。開口一番私が「込み200万くらいだと、ゴルフ、はちょっときついすよね…」とジャブを打つと、「それだとPoloになっちゃいますねえ。」とセールス氏。そーかそーか。こういうセールス氏に売られるPoloはずいぶんかわいそうなやつだなあ、と思ってあきれて物が言えなかった。どうもVWジャパンのボトムをつとめるPoloは、営業サイドから見ると「貧乏人に売る車」になってしまっているらしい。訪問して10数分。私はそそくさと店をでた。MTがないという事が分かったのも、私の気持ちにとどめをさしたのである。
その足でプジョーへ。セールス氏は親切。セールスっぽい親切でなく、「あーこのヒトは車好きなんだなあ」と思わせるかんじ。206を久しぶりに真近で見る。うーん、流麗なスタイル。しかも目が僕と同じ吊り目だ。試乗、試乗。あいにく試乗車はATしかなかったが、乗れるのとそうでないのでは大きな違い。感想は「ほんとに74馬力か?」というものだった。ATのシフトダウンしたがり、シフトアップ嫌がり症には戸惑ったが、ま、MTを買うんだから関係ないだろう。乗り心地もいい、ような気がする。とにかくきびきびなのである。セールス氏に話しを聞くと、結構売れているのだと。3ドア、MTにしようとははやばや固まったが、XTかXSか、つまり1400ccか1600ccかは迷った。しかし、1600ccはちょっと予算がつらい(かもしれない)。なるべく安くしたかったのがホンネなのである。前に訪問したVWではそのネタでヤな思いをしているので、慎重に、1.4がいいかなあ…といってみると、セールス氏「1400!マニュアルの1400は楽しいですよぉー。女性が多いからATがよく出るんだけど、1400はねえ、ほんとはマニュアルで乗ったほうがいいの!」うーん、全てがうまくいっている….3月下旬入船のXT/MT/3Drが2台あるという。ほっとくとすぐ売れてしまうという。小さい頃から買い物の踏ん切りが肝心なところで悪い僕は、その話しを耳に引っ掛けたまま帰宅。その夜は長い事カタログとにらめっこしていた。
「売れてるんですよねえ」セールス氏のこの言葉がこだまする。これを逃すと4ヶ月以上待ちになるかもという事も。んで、翌日、判子を押してしまった。色はクリスタルブルー(水色系)とインディゴブルー(そのままです)の2つで迷ったが、ソリッドな、徳大寺氏もお気に入りのインディゴブルーにした。
その翌日、VWのセールス氏から電話。試乗車が用意出来たとの事。プジョー206を買ったと告げると、動揺を隠せない様子。おととい来やがれっ。
契約後、お願いしてXSのMTに試乗させてもらう。べつに1600に未練があったのでなく、MT+ウインカーレバーが左側についているというのが非常に不安で、運転するイメージがつかめなかったのである。「好きなだけ乗ってきてください」という有りがたいセールスレディのお言葉を背に、乗ってみて一安心。いやいや、すぐに慣れるね、きっと。
んで、前車とのお別れ(こいつが間際に結構ごねたのだが)を経て、4月22日めでたく納車。エンストと戦いつつ、現在に至るのである。所有してみての感想は満足度120%というところか。MTのコンパクトな車というのはかくも楽しいものなのか、と実感している。初めて「キビキビ」という言葉の意味がよく分かったような気がする。通勤も、遠出もとにかく楽しい盛りである。74馬力と聞くと、皆ヒトは「非力じゃない?」と聞くが、そんな事はない。そんなときはシフトダウンである。スピード出てなくてもスポーティーに走れる、それが日常。そこがたまらないのだ。280psなんて車がごろごろしているが、僕にとってはあんなものは駄菓子屋に1億円持って買い物に行くようなもんで、日本という狭い駄菓子屋には、これくらいが一番楽しいのである。
そうそう、あとうれしいのは燃費。リッター17キロ走った。ハイオクになってもお徳になるとは思いも寄らぬうれしい誤算だった。
