プジョー307。
306がフェードアウトし、プジョーの3シリーズの後継車として、M1セグメントの強敵ゴルフを相手に戦うべく登場したハッチバックである。この度、日本にも導入が開始された。日本に導入されるグレードは全部で3種類。コンフォートモデルのXT、スポーティーモデルのXS、そして17インチホイールやレザーシート等をおごった最上級モデルXSIである。パワートレインは1種類。2000ccの直列4気筒ツインカムエンジンは、206S16や406の2リッターに搭載されているものと同じで、137馬力を発生し、トランスミッションは4速のシーケンシャルモード付きAT、5速MTの両方が選べる。駆動方式はFF。306シリーズとの大きな相違点は、3ナンバーサイズに拡大されたボディと、ゴルフを仮想敵とし、上質(プレミアム)をより鮮明にコンセプトとしているところである。価格は239万円〜274万円。ボディは3ドアと5ドアの2種。
近所のBLにオイル交換に出向いた。わが206は依然快調であり、先月少々走行距離をのばすことができなかったものの、調子を崩すことなく走っている。むしろ調子を崩したのは飼い主のほうで、中央道上で赤切符を頂くなどどうも芳しくない。おかげでゆくゆくはと考えていたスーパースプリント社製サイレンサーの導入はしばらくおあずけ相成ってしまったくらいだ。どうもよくない。さて、オイル交換を待つあいだの肴は307であった。206CCもどでーんと飾ってはあったが、しかし307のほうが数倍大きな顔をしていた。CCは話題もひと段落、という感じである。
307は実際ショールームでの扱い以上に、その実物が大きい印象だ。206と同様塊感の高いボディは306の華奢な印象を一気に拭ってしまうほどであり、外見からしてこれは306の後継車ではないということが明確に現れている。ドアを開け、閉めてみてもそうだ。306についてまわるフランスの実用車という趣は影をひそめ、実に重厚な音をたててドアが閉まる。
ダッシュボードのチリや処理一つとってみても、これまでのフランス車の方向性とは違う。質実剛健を目指したつくりになっていることがよく分かるのだ。ただし、上質感を演出した結果 、インテリアデザインに冒険が少なく、極めて無難におさまっているところは気になる。新世代プジョーとしての新しい提案と言う点では、307のインテリアは非常に希薄である。
また、フランス車の美点としてあげられるシートについても、もはや旧来のフランス車の面 影はそこには皆無だと言ってよい。固く、座面が平たいシートは、ホールド性ではどうか分からないが、すくなくともやわらかく包み込むようなシートを期待して307のシートと対面 したら間違いなく失望するだろう。その点は206でも指摘されていたことだが、307ではますますシートは「平凡」になってしまっていた。しかしながら、M1セグメントを戦うグロ−バルカーとしてみた場合、この選択は間違っているとは言えないだろう。事実、シートの質と室内スペースのバランスはよく、大人4人を快適に長距離乗せてドライブするには申し分のないパッケージングである。
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キイを借りて、少々連れ出して見ることにした。試乗したのはXSの4ATモデル。色はルシファー・レッドだ。
2リッター137馬力のエンジンは躊躇することなく目覚め、主張し過ぎない音量で安定したアイドリングをする。運転席に座り、ドライブポジションを合わせた印象は、206に初めて乗った時とさして変わらない。少々高めの着座位 置と、スタイリングの関係上前の左右の見切りが悪い。206はもともとのサイズが小さいため、この見切りの悪さを不便に思うことは実用シーンでは皆無だが、3ナンバーになんなんとするボディではどうなのか少々気になるところである。Dレンジから加速して70キロ前後で巡行して見るが、エンジン音は相変わらずごく控えめで、ATのマナーは206のそれに比べて若干の改善をみているような気がする。少なくとも、日本のAT車からの乗り換えでは、206のそれのように大きな違和感を覚えることは少ないのではないかと思う。少々曲がりくねった道を選択し、シーケンシャルモードを試してみるが、結論から言うとこれは所詮トルコンATのオマケみたいなものである。のべつシフトダウン・アップに1テンポ以上遅れが生じ、コーナーに入る前のシフトダウンが遅れ気味である。慣れによって先回りのシフトダウンを心掛けることはできるが、あまり実用的ではない。やはりこの手のものはMR-SにみられるクラッチレスMTにはかなわない。
パワー・トルク感は申し分なし。取り立ててスパルタンと言うわけでもなく、全域でフラットにトルクが出ているのは好印象だ。ATと非常に相性のいいエンジンと言える。ただ、4000回転以上ではその車格にふさわしくない音が高くなる印象があり、MTで回して走りたいエンジンとは必ずしもいうことはできない。スポーティーなエクステリアを持ったXSIも同じエンジンなので、「羊の皮を被った狼」ならぬ 「狼の皮を被った羊」ということになる。
MTモデルもラインナップされているが、206と違ってあくまでATを主眼においた選択が賢明だと思う。MTでのスポーティードライビングを愉しむには如何せんボディが大きすぎ、また1.3トン以上のボディは軽快感にも大いに欠ける。足回りもしかり。206で固くなったと評された足回りはこの307でも同様で、極めてフツーに仕上がっている。残念ながら高速域での安定性を試す機会はなかったが、ある意味適度に固く、安定した走りと乗り心地をもたらす。僕の206XTでは、それでもまだコーナーで粘っこくロールし、踏ん張ってコーナリングするという「猫足」を垣間見ることができるが、そのような猫足の片鱗はさらにこの307のサスペンションでは希薄になっていると言える。
将来スポーティーモデルの登場も噂されるが、307はベースの段階でスポーティーに不可欠な軽快さを失っており、そのできばえはかのライバル、ゴルフGTIのようなツアラー的な性格が色濃くなると思われる。MTでキビキビと走る分には、206のXSあたりを選択したほうがより目的に合っており、また価格もリーズナブルだ。
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勘違いしてはいけないのは、名前はどうあれ、これは306の正統な後継車ではないということだ。ピニンファリナの瀟洒なスタイリング。実用性溢れる質素なエクステリア、そして猫足と活発かつ軽快にまわるエンジン・・・これらのコンセプトとは全く違うところを目指して(まさにNEW WORLDだ)おそらくこの307は開発されているのだという感を、今回試乗して改めて強く感じた。M1セグメントでのプレミアムハッチの1台として、打倒ゴルフを目途に開発されており、また同時にグローバルカーとしての位 置付けも大きい。307がフランス車らしいかということよりも、307がフランス車であるということの価値のほうが、特に日本市場では大きいのではないか。ゴルフクラスを買う層に、プジョーも眼中に入れてもらい、乗ってもらう、その間口の広さをフランス車が身につけることは、プジョーという商業体、またフランスの自動車メーカーという観点から見てもけして意味のないことではないと思う。プジョーらしく、豊富に綺麗なカラーをそろえていることや、好き嫌いは分かれるが、ある種CI化したつり目のフロントマスクなど、プジョーがビジネスとして日本市場でさらに飛躍するためには、この307、まずまずのデキではあると思う。206と307の2台の品質の良いプジョーが多く乗られるようになれば、フランス車=壊れるというイメージの払拭もそう遠くないと思う。フランス車好きのノスタルジイだけでは、メーカーは食べてはいけないのである。307のちょっと他と違う、ちょっといいモノ感は、今までフランス車に見向きもしなかった層には、なかなか良くアピールするのではないかと思う。
ぶんせきは
KENTARO