ケンとメリー〜愛は風のように〜」
〜イメージ広告戦略の先鋒〜
BUZZ 1972

T0P/ MUSIC ESSAY/KINKYO
GUESTBOOK/BACKNUMBERS


 「ケンとメリー」と聞いて、ピンと来る人は現在どのくらいいるのだろうか。車が好きで、特に旧車なんかに興味がある人なら、ぱっと思いつくかもしれない。これはクルマの名前の前に「〜の」とキャッチフレーズを付けることが流行っていた70年代に、日産スカイラインに付けられたキャッチフレーズである。ちなみにその前の「ハコスカ」は「愛のスカイライン」、そしてこの「ケンメリ」の後のスカイラインには「スカイライン・ジャパン」というキャッチが付けられていた。
 
 それにしても、このように特定の商品のタイアップとして、これだけあからさまなレコードが出される例は、現在ではなかなか見られない。せいぜい、最近ので思いつくのは「勇気のしるし(牛若丸三郎太)」位である。しかもこの唄、「勇気のしるし」と同様なかなかヒットしているのである。この当時をリアルタイムで知らないのだが、様々なクルマ関係、世相風俗関係の資料を見てみると、ケンとメリーのスカイラインのトレードマークとなっていた傘のマークをあしらったグッズが売れたりと、当時のクルマの広告戦略としては、なかなかうまいやり方でスカイラインを盛り上げている。(のちにこの傘のマークは同社の「ラングレー」というクルマに使われる。そのキャッチフレーズは「ポールとポーラのラングレー」。懲りない会社である。)当時のクルマのCMといえば、やれ燃費がいいだとか、出足が鋭いとかいう機能性重視のCMが限界を迎え、新しい広告としてのアプローチを各社模索していた時期といえる。
 
 この唄、このようなクルマの販売戦略に踊らされて、中身もクルマがらみのものかと思いきや、そうではないのである。ジャケットこそ、イメージカラーのスカイブルーに塗装されたスカイラインと「ケンとメリー」とおぼしき金髪の男女が高原のような所で佇んでいる、てなものだが、歌詞には全く意味はない。最近のPOPSとほとんど同じ世界である。ただ、「スプーンとカップをバッグに詰めて道の向こうへ出かけよう、今が通り過ぎて行く前に」てな具合に、当時のワカモノ達が、どんな情景描写に、どんな言葉に好感を持っていたか、そしてイメージ戦略としてヒットにつながっているのか、それがなんとなく分かる、という意味で、この唄は面白いんじゃないかと思う。

 なにしろ、この時代は「イメージ」といってもたかがしれていて、吉田拓郎や井上陽水の全盛時代だったため、一時期の泥臭いフォークの時代は終わり、貧乏くさい「叙情派」、あるいは様々のグループが試行錯誤を繰り返すカオスの時代であった。そんな中で、この「ケンとメリー」はある意味非常に浮いた存在のヒット曲であった。が、現在の時流につながる薄味のPOPSとして、先見の明があったことは否めない。

そんな「ケンメリ」がデビューした直後、石油ショックが起き、スカイラインのようなスポーティーカーは受難の時代を迎えるのである。


ぶんせきは
KENTARO