「氷の世界」 T0P/ MUSIC ESSAY/KINKYO
井上陽水 1973
GUESTBOOK/BACKNUMBERS
井上陽水の出世作。1973年12月1日発売。前々作「断絶」からセールス面でレスポンスがあり、その後の作品が順調に順位を伸ばしたあと、満を持して発表されたオリジナルアルバム。この「氷の世界」のものすごいのは、アルバムが売れて10万枚、の時代に、なんと131.4万枚もの驚異的なセールスを残したこと。そして、1973年12月に発売されてから、1973年12月17日付〜1974年3月11日付まで、そして一週間あいたのちの3月25日付、また一週間あいて4月8日付〜4月22日付、その半年後の9月2日付〜9月23日付、翌1975年の2月3日付〜3月10日付、4月7日付〜5月17日付、そして6月2日付と、発売後1年半の間にわたってアルバムチャートの1位を独占し続けたのである。CDの販売枚数が年々(特にアルバムが)増加し、100万枚というコトバに慣れっこになってしまった感のある昨今だが、このアルバムのように、爆発的に世の中を席巻した例は、もう見られないであろう。この131万枚は、現在の1000万枚くらいの衝撃度を当時のミュージックシーンに与えたと言っていい。
タイトル曲になっている「氷の世界」をはじめ、当時、雨後の竹の子のようにたくさん出てきたフォークシンガー達とは全く違う、独自のアイロニーを持った世界が凝縮されている。最近の陽水のイメージ、ともするとへろへろしたオッサンのように見られがちだが、この人の全てはこのアルバムに凝縮されている。陰鬱な、静かな世界、時に激しくかきむしられるような世界、そして、そうした世界からは想像もつかないようなPOPな世界等、様々な世界を垣間みることの出来るアルバム。ギターテクニック、ヴォーカル、そしてルックスと全てが個性的。この個性が世の中を席巻したとき、僕はまだこの世に生を受けていなかった。それが残念だ。
実際、その後のミュージック・シーンを眺めて育った世代の僕からしても、このアルバムは非常にインパクトが、強い。一曲目の「あかずの踏切」では、軽快な、それでいてなかなか深い情景描写がある。その後は現在の井上陽水のスタイルである、アイロニーと情景描写を織りまぜた唄の世界が展開される。しかし、五曲目の「氷の世界」では一転、激しい感情の動きが、その詩の字面からは見えないものの、かいま見える。そして「白い一日」「心もよう」という有名な曲が「陽水ワールド」の奥深くまで聴く者を誘っていく。「桜三月散歩道」では小気味のよい安田裕美のアコースティックギターサウンドが聴ける。
このアルバムのなかでのオススメは「氷の世界」「白い一日」「小春おばさん」。日本のポピュラー音楽のなかで、一つの金字塔を打ち立てたアルバムなので、ぜひ一度聴いてみることをお奨めする。
| M1 あかずの踏切 M2 はじまり M3 帰れない二人 M4 チエちゃん M5 氷の世界 M6 白い一日 M7 心もよう M8 待ちぼうけ M9 桜三月散歩道 M10 Fun M11 小春おばさん M12 おやすみ |
ぶんせきは
KENTARO