「風に立つライオン T0P/ MUSIC ESSAY/KINKYO
〜すごい、すごい唄だ〜
さだまさし 1987
GUESTBOOK/BACKNUMBERS
「さだまさし」というと、暗いだのなんだのいう人がまだいる。まあ、ヒットした唄は殆ど暗いんだから、そういわれてもしょうがないかもしれないけど。「精霊流し」だの「無縁坂」だの、一般的に「暗い」といわれるような唄は彼のお手の物だ。しかし、おそらくそれは彼の感受性の強さによるものである、ということは、彼について書かれた幾多の書籍においてもいわれている。
しかし、「暗い唄」が多いとされているさだまさしは、その感受性のたまものでもあるのだろう、本当に優れたバラード作家でもあるのだ。そのなかでも、この「風に立つライオン」は特筆すべき作品といえる。この唄は、ストーリー性が非常に強い。ストーリー性が強いのはなにもこの唄に限った話ではなく、これが彼の唄が現在ヒットしない最大の要因の一つでもあるのだが、さだまさしの強い個性であり、はまったらなかなか抜けられない、飽きられない要因でもあるのだ。
この唄は、アフリカに渡り、ボランティアで現地の人々への医療活動に携わっている医師が主人公である。これは鹿児島の大学病院に勤務する実在の人物なのだが、主人公はアフリカの大自然の美しさ、現地の人々への医療活動を通して自分が考えたことなどを、昔の恋人に宛てた手紙の中で、淡々と描写していくものである。この中で特に素晴らしいのは、その情景描写である。「100万羽のフラミンゴが一斉に飛び立つときの空」「草原の象のシルエット」など、テレビや本でしか見たことのない情景が目の前に広がってくる。これは、このテーマにぴったりのメロディーを書いたさだまさし、そしてそれに見合った素晴らしいアレンジをした渡辺俊幸の芸術作品といっても過言ではない。弦・パーカッションの使い方、「Amaging
Grace」の引用など、このアレンジはさだまさしの数ある唄の中でも文句無くナンバー1だと私は思う。
ストーリー性の強いものが好きな、詞にぐっと来てしまうタイプのリスナー諸氏には、是非おすすめする。これは、1980年代の名曲といってもいい。薄味の、断片的な情景描写に終始し、よく聴くと異常なまでに説教くさい昨今のヒット曲に辟易している方、おためしあれ。1987年 アルバム「夢回帰線」収録。