「さよなら夏の日」
〜少年時代の思い出〜
山下達郎 1991

T0P/ MUSIC ESSAY/KINKYO
GUESTBOOK/BACKNUMBERS


 山下達郎という名を聞いて、なにを思い出すか、それはおそらく今30代半ばから40代に入ろうかというところを境に、大きく2つに分かれるのではないだろうか。このラインよりも年上の人にとっての山下達郎は、1980年代前半にかけての「Ride on time」をはじめとする「波とタツロー」という夏のイメージ、そして、それより下の人には、1983年、アルバム「メロディーズ」の一曲として登場した後、1988年から4年間に亘って放送されたJR東海の「シンデレラ・エクスプレス〜クリスマスキャンペーン〜」のCMソングとしてジワジワとチャートを上昇、ついには1989年、発売から実に6年6カ月をかけて1位に登りつめた「クリスマス・イブ」のイメージがあるだろう。「夏と冬」この対照的な2つのイメージを持たれていた山下達郎が、「クリスマス〜」の大ヒットの後に、夏の歌としてリリースしたのがこの「さよなら夏の日」である。

 この曲も確かJRかなんかのCMソングで、サビの部分のゆったりとしたメロディーラインが好きになってこのシングルを購入したのを覚えている。なんでも、この曲は、山下達郎本人の昔の恋の思い出(夏の終わりに彼女と2人でプールに行って夕立に遭い、その後虹を見たとか)がモチーフになっているんだそうだが、僕自身も、やっぱりこの歌をたまに聴くと、高校の頃の夏、夏休みのことを思い出してしまう。僕の夏休みは、部活の練習か、夏期講習に出るかという大したものではないのだが、当時の僕は通学途中にウォークマンで音楽を聴くという習性があったので、特にこの曲をよく聴いていた1991年の夏、通学途中の風景や、当時つきあっていた、自宅と高校の場所が全く逆(つまり僕の家の方に彼女の高校があって、彼女の家の方に僕の高校があった)の女の子と、帰宅途中に河川敷で会って交わしたたわいもない会話などが鮮明に思い出されてくる。かくして、僕の山下達郎に抱くイメージは、「冬」から「夏」へと変わっていった。もちろん、「クリスマス・イブ」もいい曲だけども。

 「名曲とは、その人がその曲を聴いたときに<青春>に戻れる曲のことだ」なんかの本に書いてあったけど、ならば、「さよなら夏の日」は僕の中の数少ない名曲なのかもしれない。1991年5月シングルとしてリリース、その後、アルバム「ARTISAN」に収録。


ぶんせきは
KENTARO