「もうひとつのランキング」

T0P/ MUSIC ESSAY/KINKYO
GUESTBOOK/BACKNUMBERS


日経エンタテイメント!!(この「!!」が筆者はたまらなく嫌いなのだが)の10月号が今店頭に並んでいるが、この誌面でなかなか面白い特集を組んでいる。「ライブを楽しむ」がコンセプトで、「これから」ライブに出かけてみようかという人たちに対して、電話予約の必勝法とか、「ライブアーティスト」と呼ばれる人々のライブの楽しみなどを掲載している。その中に、このレコードセールス偏重のご時勢に、まことに世に出ることが珍しい類のランキングが載っていた。それは「99年上半期のライブ動員ベスト50」というものである。これを見ると、その顔ぶれが普段見なれているヒットチャートの顔ぶれに似ているようで、実はちょっと違うということに気づくと思う。

確かに、GLAYやラルクなど、ヒットチャートをにぎわしているアーティストたちの顔が上位に並んでいる。一度のギグで何十万人とオーディエンスを集めることの出来る彼らのアーティスト・パワーには、本当に驚かされる。しかしそのパワーの強さゆえ、ライブの本数はせいぜい十数本といったところである。いっぽう、20位以下に目をやると、特にシングルチャートにはとんと顔を出すことのない、高橋真梨子、スターダスト・レビュー、さだまさしらのベテラン勢が顔を出してくる。いずれも特徴的なのは、半年の間に50本強という、ある意味驚異的なペースでライブを行っているということである。本数もすごいが、そんなにたくさんの箇所、(おそらく)全国津々浦々回ってもお客が「入る」ということに関してはもっとすごいのではないかと思う。彼らは、CDセールスこそ目立つような数字ではないものの、このようなランキングを見れば文句なくトップ・アーティストであるといえる。

僕は常々、CDの売り上げだけでアーティスト・パワーを図るかのような風潮には疑問を抱いている。少子化・高齢化が進むこの時代に、極端に購買層が偏っているCDセールスだけでは、普遍的な社会的認知度など、到底図れるわけがないのだ。宇多田のCDを、オヤジが買うことがあれほど大きく騒がれるというのは、(まともに見れば)音楽における世代間のシンクロだから微笑ましくもなるが、逆にそれほどまでにCDというものをオヤジが買わないことが露呈したような気になって、ちょっと複雑な思いであった。まるで、「音楽シーン」というものはワカモノだけのものであって、ある一定年令以上の人々にとってはまったく関わりのない場所、いや、関わることすら可笑しいと思われているような空気を、改めて認知し直してしまったのだ。

それだけに、このライブ動員数のランキングは、そうしたアダルツの音楽生活が垣間見えるようで、見ていて非常に興味深かった。普段CDTVなどの音楽チャートしか見ていない人々は、本屋やコンビニで立ち止まってちょっと眺めてみるといいと思う。きっと、もっと広い視野で、今どんな音楽が聴かれているのか、つかむことが出来るとおもうからだ。ライブに行く、チケットを取って、わざわざ暇を確保して、その場所まで足を運んで、2時間ないし3時間の間、一人の音楽家の曲を聴くというのは、実はものすごくエネルギーのいることである。だから、このランキングはCDのそれと少なくとも同等位の価値はあると思う。


ぶんせきは
KENTARO