「じゃ夏なんで」 T0P/ MUSIC ESSAY/KINKYO
〜今年の「金鳥」はかせきで決まり〜
かせきさいだあ 1996
GUESTBOOK/BACKNUMBERS
さ〜て、もうすぐ楽しい夏がやってきますよ、と学生時代は気軽にかけたんだけど、う〜ん、今年は複雑。だって、甲府の夏ってあっついだけなんだもん、と日記みたいな書き出しで始まってしまいましたが、もうすぐ夏だってことでこんな曲を選んでしまったわけです。去年はゆずの「夏色」なんていう、そのものずばりのタイトルの唄が売れちゃったりして、ヒトビトが「にっぽんの夏」って奴を欲している、っていうことが露呈しちゃったカッコウになったわけですけどね。ま、夏休みにフィジーやバリに行ってこれみよがしにガインガインに日焼けして鼻の頭に皮膚ガンこさえて帰ってくる、っていうのも愉しいけど、浴衣に線香花火の世界も捨てがたい、って奴だと思いますよ、やっぱり。
スイカ、花火、浴衣、風鈴なんていうアイテムが思い浮かんで、ゆずみたいにエセ大林宣彦系に走るのも安直な一つの方法でありますが、字面から、そしてサウンドから、全身全霊でにっぽんの夏を感じたい!という向きにはこの「じゃ夏なんで」はすごくぴったりだと思いますよ。かせきさいだあという人は、基本的にラップ(っちゅうかこれをラップと片づけるのはチト忍びないのだけど)形態の音楽をやっている人で、サンプリングを主とした音作り、そして昨年は南”ウォンチュー”佳孝とのコラボレーションでも楽しませてくれた、ま、知っている人は知っているけどそうでない方は全然という、ポジショニングとしてはありがちな人なのです。ところがこの人の文才(作詞力というよりはこう呼んだ方が適当)がすばらしくて、いつも脱帽の思い。なにせ、一曲聴き終えて、一冊のエッセイか、ともすれば文庫本を読み終えたような感覚に聞き手を陥らせる、これはなかなか出来る事じゃありません。サウンド的に多種多様なモノが受け入れられつつある日本のミュージックシーンですが、そこにのっかる「詞」というものは、いかんせん全然進歩していないと思うのです。とくに日本語の語感とか、単語の選び方とか、そうしたところに気を使えてなおかつそれが上手くはまっているアーティストは少ない。かせきさいだあはそんなアーティストの一人だと思うわけです。
また、音の作り方も絶妙。いかにもの「夏」な効果音は、いつもと同じハズのループをどことなく涼しげなモノに変えてしまうからアラ不思議です。下手にメロディーがない分、歌詞もスムーズに頭に入ってきて、熱気でくらくら来そうな頭をじわじわ冷ましてくれる効果は絶大。チューブやレゲエで思いきりパーになる夏、っていうのもそれはそれで愉しいけど、たまには知的に日本の夏、ってやつを感じるのもいいのでは。一聴後にビールじゃなくて冷酒に冷や奴、そんな一曲です。アルバム「ベスト・オブ・かせきさいだあ」、シングル「さいだあ・ぶるーす(この曲も夏向きにいいんだコレが)」のカップリングとして収録。
ぶんせきは
KENTARO