album「無罪モラトリアム」(HEAVY GAUGE)
〜似ているとか、似てないとか〜
椎名林檎 1999

T0P/ MUSIC ESSAY/KINKYO
GUESTBOOK/BACKNUMBERS


嫌いだとか、良くないだとか、アーティスト・曲をけなす際に「・・・に似ているから良くない」とかしたり顔をしていう奴がはびこっている。一番簡単な方法だよね、「前にやっている人がいる」っていうのは、何も知らない人々はそれを聞いてすぐ「あ、そうか。・・・って二番煎じなんだぁ」と思っちゃうから、説得力ありすぎ。なんでいきなりこんな事を書き始めているかというと、所々の掲示板において椎名林檎に対して「アラニス・モリセットに似ている」だとか「ビョークっぽい」とか発言している輩が目立っているのをさる情報筋からキャッチし、実際僕も読んだからだ。ほうほう、アラニスに似ている、似てねえことはねえやな、ふんふん、ビョークに似ている、さもありなん。でも「だからなんだっちゅーねん」である。「アラニスに似ている=だから嫌い」みたいな書き方をしているお脳の足りない人たちがたーくさんいるのである。これは別に椎名林檎に限ったことではない。他のアーティストに対しても、「あのリフは何とかと同じ。パクリだよ。」なんつー発言をする人間はこれまでにもあとを絶たなかった。別冊宝島のなかでこういうパクリ論争をやっていて、元ネタがこういうものだといいとか、こう見せるとダメとか、一生懸命線引きをしていたが、アレはアレで別の意味でまたお脳の足りない人のやることだと思うが。

曲というのはオタマジャクシとコードで基本的に成り立っていて、その組み合わせの問題である。こう書くと組み合わせは無限大にありそうだがどっこいその組み合わせの多くはどう考えても不自然な(聴いていて不快になってしまう)組み合わせなんである。自ずと、このコードを最初に置いたら次はこれそれあれしかなくて、あれをおくとあーいうコードこーいうコードでないとおかしいなあ、という具合にだんだん考えられるコードやオタマジャクシが少なくなってしまう。だから、今日びでてくる日本のポップスのコード進行は、八方手を尽くして探せば全く同じコード進行をした曲なんて長い音楽の歴史の中1曲や2曲は必ずでてきてしまうものなのである。これが「偶然に」似てしまうメカニズムであり、他には二つとないオリジナルな世界を作り上げることの難しさでもある。

椎名林檎=アラニス論(論て言えないか、どれも数行だし)を主張している人々は、いわゆる「影響」とか「本歌取り」みたいな作為的なものをいっているのだろうが、どのアーティストだって影響されたものはあるはず。つまり、はっきり言ってしまえば近年でてくるアーティストの唄の全部が何らかのバックボーンを抱えているといってしまっていいと思う。問題はそこから始まるのである。影響されながらも、それっぽいもののなかにどうやってオリジナルを表現していくか、ここにかかっている。オリジナルが見あたらなくても、今まで考えられないような音楽の要素の組み合わせを「聴いていて気持ちいい」ように作り替えることが出来てしまったならば、それだけで拍手喝采ではないかと思う。そこを読みとってこそ、はじめて「・・・に似ていて、しかもオリジナリティのかけらもないから嫌い」とか言えるものではないだろうか。

椎名の場合は、だいたいアラニス一色ではない。日本の歌謡曲からの影響も随所にうかがえる。それに、その歌詞、言語感覚は日本語を意識し、日本語で遊ぶ。エイゴかぶれが多い中、ましてや彼女自身がエイゴかぶれでありながら、日本語で遊べる。これが出来る人はそうそういないと思う。加えて、あの極めて西洋化されていない歌唱法(「r」の発音は日本的とは言えないが、節回しなどに「演歌」のコブシに通じるものを感じる)と声、これこそがオリジナリティである。ここが聴き所なのだ。相対的に見たり、単純な曲想に関して誰に似ているみたいなことはどうだっていいのである。そういう処が少なくとも僕にとってはオリジナリティと共に「聴いていて気持ちいい(ちょっと疲れるけどね)」のである。

おそらくそこまで腰を据えて聴いてないんでしょ。そういう奴は新しい曲を聴くとき「これは何に似ているのかな??」とそればっかり考えて聴いてんじゃないの? 悲しいね。それでアラニスに似ている、だからダメ? そう言ってダメ出しているキミの方がよっぽどダメだね。

〜追記〜
そうしてアーティスト側が一生懸命つくってきたものでも、時としてばっちり何かと(メロディーとかが)似てしまう(例の亜星vs服部のように)。そういう時に、それを世に出してそれで儲けていいかを考えるのがレコード会社の役目だと思うぞ。そして、それも実際なっちゃない。そういう意味では、制作者側のプライドも極端に欠如していると思うが。



ぶんせきは
KENTARO